におい解体新書 〜においとは何か編〜 第二章 においでもめる彼女との仲?においが消せれば、証拠も消える?

犯罪捜査に似ている?消臭

 「目に見えない、においは厄介」目に見えないから気づかない。大丈夫かなと思っても、敏感な人には気づかれてしまう、そんな体験を皆さんもしたことはありませんか。においを消すことが難しいのは、においそのものの厄介な性質に起因しています。

えっ、この女性のにおいは?

はじめて彼女が、自分の部屋に来る日。“ピンポ〜ン”「ずいぶん早いな」と、Aクン、急いでドアを開けると…。そこには姉が?どうやら、ひとり暮らしの偵察に来たらしい。「とにかく用がないのなら、もう帰れよ」と言えば言うほど、「なにかある」と勘のいい姉は、なかなか帰らない。 ようやく追い出して、ホッと一息ついたところに、また、“ピンポ〜ン”

笑顔で部屋に入ってきた彼女。でもすぐに表情は険しくなって、「えっ、この女性のにおいは、なに?」目に見えない姉の痕跡、“残り香”が部屋にいっぱいだったのです。「いや、姉が」とドギマギ、あたふたと窓を開けるAクンのようすに、彼女は完全に“お怒りモード”。いやはや、においって厄介なものですね。

消したい「におい」が、なかなか消えないのは、なぜ?

においは、目に見えないけれど物質です。

ですから、そのにおい物質を、窓を開けて換気して追い出すか、活性炭等で吸着させるか、におい物質そのものを分解してしまうことしか消せません。

ただし、においの分解除去にも厄介な問題があります。におい物質が、時間の経過とともに分解されて半分になったとしても、においは決して半分にはならないのです。アンモニア臭を例にとれば…。そのにおい物質が97%分解されたときに、においは半分に、99%除去されて、ようやく人には嫌なにおいが1/3程度になったと感じるそうです。

においの犯人を、特定せよ!

においが物質であるなら、消臭のためには、まず対象となる“におい物質を特定”する必要があります。犯人逮捕には犯人の特定が必要なのと同じです。

Aクンが彼女にあらぬ疑いをかけられたのは、きっと姉の“残り香”、香水か何かの“におい”のせいでしょう。

なお、とくに消したい、消さなければならない「悪臭」は、以下のように「悪臭防止法」に特定されています。

悪臭防止法 特定悪臭物質 規制基準

1 事業場の敷地の環境線の地表における特定悪臭物質および規制基準

特定悪臭物質名 許容限度
アンモニア 1
メチルメルカプタン 0.002
硫化水素 0.02
硫化メチル 0.01
二硫化メチル 0.009
トリメチルアミン 0.005
アセトアルデヒド 0.05
プロピオンアルデヒド 0.05
ノルマルブチルアルデヒド 0.009
イソブチルアルデヒド 0.02
ノルマルバレルアルデヒド 0.009
特定悪臭物質名 許容限度
イソバレルアルデヒド 0.003
イソブタノール 0.9
酢酸エチル 3
メチルイソブチルケトン 1
トルエン 10
スチレン 0.4
キシレン 1
プロピオン酸 0.03
ノルマル酪酸 0.001
ノルマル吉草酸 0.0009
イソ吉草酸 0.001

表の特定悪臭物質とは、「不快な臭いの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質」だと、“特定”されたものだそうです。それにしても、ノルマル吉草酸(きっそうさん)の許容範囲は、0.0009ppm! 「ppm」は百万分率ですから、気体全体の100億分の9しか許されない。この悪臭防止は、10億人の中から1人の犯人を捜しだすような、難しさなんですね。

次章からは、ビジネスまわりの悪臭に関する消臭レポートをお届けします。
一覧に戻る