JAXA × FUJICO

I-03:光触媒で、宇宙ステーション内を消臭 北九州発の脱臭技術が、その制約にチャレンジ〈挑戦編〉

国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の外観

エネルギー使用や、交換・補充を極力避ける。その制約から、光触媒の消臭に光があたることに。

“宇宙空間・宇宙船内の消臭”に特有なものとして、大きな制約が2つあることを、前回お話しました。制約のひとつが、「消臭効果の発揮にエネルギーを極力使用しないこと」です。このため、運転時に電力を使うイオン放出型や電気集塵型の空気清浄方式はできれば避けたいところです。そして、もうひとつ制約が、「交換品や補充品ができるだけ出ないこと」です。この点から、フィルターや吸着剤の交換が必要のないシステムが望まれます。このような状況下で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究者が試してみようと目をつけたのが、光触媒です。

光触媒は、光によってガスや菌を二酸化炭素と水に分解し、消臭・殺菌効果を発揮します。また、光りさえあれば、原理的に効果は半永久的(交換・補充が不要)であることから、「国際宇宙ステーション(ISS)内の消臭(及び殺菌、有毒ガス除去)に使えるかもしれない」ということで研究がスタートしました。

「きぼう」船内実験室の室内

立ちはだかる難題。低照度の室内光でも効果を発揮できるか?

“宇宙空間・宇宙船内の消臭に、光触媒を”。しかし、この試みには、難題が立ちはだかっていました。触媒(消臭・殺菌)効果をもたらす「“光源”を何にするか」です。宇宙での太陽光は、放射線、紫外線が強く人体に有害なので、通常、室内には取り込んでいません。写真はISS「きぼう」日本実験棟の室内です。窓らしきもを確認できますか。じつは、奥に見える2つの丸い穴が窓なのですが、この窓からの光を光源とするのは難しそうです。だからといって別途、エネルギーを使って紫外光ランプの光を当てることは避けたいので、室内光で触媒効果が発揮するかどうかが問われることになります。しかも、ISS内ではエネルギーを無駄にしないよう省エネに努めていて、ステーション内は通常100ルクス程度(*1)と暗いのです。(地球に送られてくるのは、いつも明るい映像なので想像しにくいですが・・・)

フジコーの光触媒は、図のように、光触媒を直接溶射(*2)する方式です。そのため、従来の溶剤に溶かして塗布する方式と違い、非常に純度の高い被膜ができ、光触媒効果が非常に高いと言われています。それでも、可視光線の100ルクス程度という条件は非常に厳しく、より高い光触媒反応を発揮するための工夫と実証実験が続けられています。

*1 照度100ルクスは、夜の街灯の下ほどの明るさ。
*2 溶射は、「溶」:コーティング材料を加熱により溶融し、「射」:微粒子状にして加速し、対象(基材)表面に
  超音速で衝突させて被膜を形成する。

持ち込みは容易か。コンパクトで場所をとらない物か。

ISSや宇宙船内に持ち込む機材の質量は、小さければ小さいほどコストを抑えることができます。また、宇宙船内は狭く、ISSも、たとえば「きぼう」の実験室は長さ11.2m、直径4.4mと決して広くはありません。写真を見ていただければわかる通り、室内に置くためにも、“できるだけコンパクトに”することが求められます。 フジコー独自開発の溶射は、低温に温度コントロールすることができますので、薄い特殊紙等にも、燃やさずにコーティングすることが可能です。ということで、ちょうど壁紙のように薄いシートに光触媒の溶射を行ないます。これであれば、他の荷物の隙間のスペースに入れるなどでき、場所を取らず、宇宙船での運搬も比較的容易ですし、持ち込んだISS内では、実験装置のない壁面に薄く張り巡らせるという使い方が可能です。 光触媒による消臭(及び殺菌、有毒ガス除去)は、将来の火星等への有人惑星探査も想定に入れて研究しているので、探査機への持ち込みが容易、船内での使用に場所をとらない、長く使えて交換が不要な点は魅力とされています。

この他にも、多くの課題はありますが、ひとつひとつ課題をクリアすべく、現在、研究開発が進められています。